「正月に考えたこと」というタイトルで書いてきたが、二回目から大分時間が経ってしまった。もう二月も後半に入っているので、正月という訳にもいかず、タイトルを変えることにした。ただ、言いたかったことは変わっていない。デジタルコンテンツの配信方法はもっと多様に考えていいと思う。ブロードバンドが世の脚光を浴びて来たので、どうしてもその回線を使ったサービスをメインに考えがちであった。そしてそれは間違いでは無いのだが、デジタルコンテンツの配り方にはもっといろいろと方法があることを忘れてはいけない。

P2Pによる配信はとかく問題視されてきたが、最近の動きを見ると、かなり世間的に認知されてきているように思える。Winyの問題があったり、最近ではShareが摘発されたりしている中で、いろいろなグループによってP2Pによる配信が実用として広まりつつあるようだ。我々アイドックも大手のP2Pベンダーとそれぞれプロジェクトをお話する機会が増えてきている。動画配信のセキュリティというとこれまでストリーミングによる配信をすればいいと言われていたが、ストリーミングによる配信では本当に動画ビジネスが大きくなった時にサーバーや通信インフラが悲鳴を上げてしまう。これまでストリーミング配信が行われていたのも、それだけ市場が限られていたということである。
今後動画ビジネスが本格化するに当たって、ストリーミング以外の方法、プログレッシブダウンロードや本当の意味でのダウンロード配信、またはP2Pによる配信、そしてDVDやUSBやSDなどのメモリーデバイスによる配信など、それぞれの特徴を生かした配信が必要とされている。前回までに述べたように、ブロードバンドは確かに普及したが、それ以上にコンテンツはリッチになって来ている。地デジも始まり、各家庭には大型テレビが当たり前になった。PCでの閲覧だけを考えても、デスクトップ型のPCのモニターも20インチ以上が当たり前だろう。そこで見るコンテンツはどうしても従来とは違った高画質のものでなければユーザーはついてこない。

前回触れた郵送によるDVD配送がここに来てとてもメジャーになっていることも皮肉なことだろう。数年前の予測では2010年には光回線を使ったブロードバンドで各家庭では映画をオンデマンドで見ている筈だった。ところがどっこい、超古典的な配信方法である郵便を使って、これまた古典的なDVDが行ったり来たりしているのだ。アメリカでNetflixが始まった評判になった時にも、日本ではブロードバンドが進んでいるので、そんなサービスは必要なくネットで映画が配信されるとまことしやかに語られていた。という私もその頃はハリウッドで認められたDRMを日本で担いでいたものだ。
何事もこういったもので、だれを責めるものでもないが、デジタルメディアが普及する段階でみんなが予測を誤り、未だに試行錯誤が続いているように見える。
次回からはもう少し違った面からデジタルコンテンツビジネスを語っていきたい。