なるいのDRM進化論

成井秀樹のKEYRING通信

ITmediaのオルタナティブブログにもより幅広い話題で執筆しています。
抄録をこちらに載せていますので、ご興味ある方はITmediaの方もご覧ください。

2011年1月アーカイブ

DRMとビュアーの関係。DRMの標準化はあるのか?ビュアーとDRMの組み合わせが電子出版の多様性を生む。

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だいぶ前に(つづく)として終わっていたものを続ける。前回は電子書籍のフォーマットの統一という課題について触れた後、それに対応してビュアーやDRMの統一ということが意味あるかというところまで述べた。

そ して次がDRMだ。PDFやiPadなどの標準フォーマットを使ったコンテンツでも、その方式をサポートする端末間で互換があるわけではない。iPadで 買ったePubコンテンツをSony Readerで読むことはできない。それぞれ、コンテンツには何らかのDRMが施されているからだ。ただし、Kindleで買ったAZWコンテンツを iPadのKindle for iPadで読むことはできるし、今後AmazonがePubコンテンツを販売はじめた時にも同様だろうが、そのePubコンテンツをAppleの iBook Readerで読むことはできない(と思う)。別の言い方をすれば、そのコンテンツが読めるかどうかは方式だけでなく、DRMとビュアーの組み合わせが決 め手となる。そしてこれはベンダーのビジネスモデルと密着した事柄なので、誰かが業界で統一しましょうと言っても無意味な話である。

音楽コンテンツと違って、書籍や雑誌コンテンツはより多様性に富んでいる。音楽は基本的にスピーカーやヘッドセットで聞くということが消費の形態で あるのに対して、書籍や雑誌の場合はそのように単純化したビュアーを定義することはできない。フォーマットは統一される必然性があるが、読書端末やPad 系端末などハードウェアとしてのビュアーやアプリケーションとしてのビュアーも含めて、いろいろなものが開発され進化していくことが期待されている。

例えて言えば、AdobeのPDFフォーマットは画像の高品質でのポータビリティを達成する技術として卓越していて、完全な業界標準として定着した フォーマットで、それを閲覧するためのビュアーソフトとしてのAdobe Readerはコンピュータの世界では標準ツールになっている。PDFがビジネスやデザイナーのツールとして使われていた時代はこれでよかったが、PDF を電子書籍フォーマットとしたときにAdobe Readerだけがビュアーで良いとは思われない。同じPDFフォーマットを使いながら、もっと便利でリッチな体験を提供するビュアーができるはずだ。実 際に電子書籍の世界ではPDFを入力フォーマットとして使いながら、Flashの技術を使ったりしたリッチなビュアーがたくさん存在する。同様に iPhoneやiPad用には様々なビュアーソフトが開発されている。AdobeもDigital Editionを用意して、よりリッチな読書体験を提供しようとしている。

DRMはそのもともとの趣旨からしてビュアーと共に動く仕組みだ。権利者の意図に基づいた閲覧をユーザーに提供するにはビュアーと一体となった DRMが必要だ。そのDRMが標準化されたとすると、コンテンツの配信や閲覧の仕組みが画一的なものになってしまい、せっかくのデジタルコンテンツの多様 性を阻害してしまう。現在市場にある多くの電子出版プラットフォームの中でAmazon Kindleが一番理想的に見えるのも、Kindleビュアー(Kindleだけでなく異なる端末上のビュアーソフト)によって、ユーザーにDRMによっ て縛られているという感覚を感じさせることなくコンテンツの消費を楽しめるプラットフォームを提供しているからだ。かと言って、AppleやGoogle のEbookサービスが同じKindle DRMを使ったら良いわけではない。それぞれビジネスモデルも違うし共通化する意味は無い。ビュアーとDRMの組み合わせが電子出版の多様性と発展進化を 支えるものだ。

Amazonのアーティストセントラルと著者セントラル。Amazonの強さの秘密のひとつがここにある。

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上の図はAmazon(日本とUS)のサイトからクリップしたアーティストセントラルと著者セントラルの例。USのサイトからは私の好きなDan BrownThomas Harris。日本からはランダムにDreams come trueAKB48、それに村上春樹村上龍のお二人だ。小さくて見えないかな?ということでそれぞれの名前に各ページへのリンクを貼っておく。ドリカム以外は私の好みではないのだが、有名だということで参考に使わせていただいた。

日本では昨年の8月末から始められたAmazonのサービスだ。アーティストセントラルも著者セントラルも考え方は同じで、Amazonに一つでも 作品(CD、DVD、書籍)が登録されていればその作品の著者や代理として出版社などがそれぞれのページをAmazon内に編集して登録できるというもの だ。それぞれ別に著者サイトやブログを持っている場合でも、このようにAmazon内に自分のページを設けて、作品を紹介したり自分について語ったりメッ セージを発信できるというのは大きな意味がある。

Amazon内の著者ページストアに行くと積極的に情報発信している作者がリストされている。簡単なプロフィールを載せているだけの人も多いが、自ら作品について語ったり、作品の一部を動画で紹介したりしている作者も増えて来ている。

従来のアナログ媒体(紙やCDなど)でも電子媒体でも同じことだが、コンテンツをネットで販売する際に一番重要なのはそのマーケティングである。コ ンテンツをAmazonやiTunesなどのように、どんなに有力なプラットフォームに登録しようとも、それだけでは無数のコンテンツの中に埋もれてしま う。また商品リストに付けられる説明や解説だけでは、その商品を積極的にユーザーに訴求することはできない。つまり、作品そのもの以外に様々な形での情報 発信が必要になってくる。それらが有機的に繋がって最終的にAmazonやiTunesに誘導される。作者または出版社がおこなうブログやTwitter での日頃からの情報発信が非常に大切になってきている。そういった情報発信の場所を自らが影響力のあるサイトであるAmazon内に置くことでSEO効果 が抜群に上昇する。

私がピックアップした人たちはもうすでに名が売れているので、べつにAmazonのセントラルが大きな意味を持たないが、他の99%のアーティストや著者たちにはこういった行為が決定的な意味を持つ。

アメリカの場合はFacebookが大きな役割を果たしているが日本にはそれに相当する場がないので、ことさらにAmazonのxxxxセントラル は重要な意味を持っている。またアメリカの出版社やエージェントと呼ばれる人たちの大きな役割がこういったネット上の情報発信をどのように効率的に行うか にある。日本ではまったくこう言ったことが出版の機能として行われておらず、意欲のある、またはモノ好きな作者の個人技に任されている。

今後日本でも電子出版が本当に立ち上がることを切望するが、その時こういった周辺のサービスが重要になってくる。アイドックのDRMをベースにした ソリューションも単に電子コンテンツの流通を支援するだけでなく、マーケティングや広告としての電子コンテンツを支援するものでありたいと考えている。アイドックのサービスはこちらへ

ゼロサムでは無いということ。紙と電子、出版の行方は。新しい価値の創造が求められている。

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毎年秋も深まると街路の銀杏は葉を黄色くし、その葉は地上に落ちて朽ちていく。何年もの間、出版業界はマイナス成長を続けている。先進各国が成長の鈍化またはマイナス成長に耐えているのと似ている。これをあたかも補うかのように電 子媒体による出版が立ち上がりつつある。これが問題だ。どう考えても電子出版は紙媒体の出版の落ち込みを補うことはできない。このことは出版界の人たちは 分かっている筈だ。しかし、こういった自らの状況を正確に冷静に判断するのは非常に難しいようだ。だれでも自らがやってきたことが衰退していくのみで救い が無いということは信じたくない、信じたくないと思う気持ちがありもしない救世主を見つけてしまう。たまたま紙媒体のビジネスが先細って行く時に同期を とったように電子媒体のビジネスが立ち上がって来たので、人は「ああ、紙が減って電子に置き換わるのだ」と勘違いしてしまうのだろう。

実際、これはとんだ勘違いで、紙が減るにしたがって電子が増えるのでは無く、実は両者は大した相関関係を持たずに動いているようだ。大きな流れとし ては紙が減るのに呼応して電子が伸びるように見えるが、電子が紙を補完するという望みは起こりえない奇跡を信じることに等しい。経済学で言うところのゼロ サム社会、

経済成長が停止して資源や富の総量が一定となり、ある者が利益を得るとだれかがその分だけ不利益をこうむる社会。米国の経済学者サローの用語。
で は無く、非ゼロサムまたはマイナスサムと呼ばれるゲームが進行している。参加者全員が敗者となるゲームだ。競馬などのギャンブルでは、敗者から集めた金を 勝者で分けるため、原則としてゼロサムになる。非ゼロサムの代表は株だ。上がる時は全員が上がり、下がる時には全員が下がる。株価が上がれば時価総額が増 え、その増えた分だけ価値が生まれている。上がる時には時価総額が増えた分だけみんなが得をし、下がる時には時価総額が減った分だけみんなが損をする。 この悲劇的な状況から脱するには、土俵を変えるしかない。新しい価値の創出をしなければならない。出版という会社の株価を上げなければならない。出 版界にはそれが求められているのだと思う。紙を電子に変えただけでは先細りを防ぐことはできない。コンテンツビジネスに対する考え方を180度とは言わな くても90度変える必要がある。音楽や映像などの同じコンテンツビジネスの進化は出版界にとって大いに参考になる。CDもDVDも売れなくなってダウン ロード型のコンテンツ配信に置き換わって来た。だが、そのダウンロード型のビジネスはCDやDVDといったパッケージ型のビジネスの落ち込みを補うことは なかった。補っているのはコンサートやイベント、その他のグッズの販売、または広告などによる他のビジネスとの連携などだろう。果たしてその総和がプラス になっているのかは分からないが、音楽業界がそちらの方向を見ているのは間違いなさそうだ。(つづく)
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プロフィール
成井秀樹写真
アスキーにてMS-DOSなどマイクロソフト製品の日本市場導入にかかわり、西社長(当時)やマイクロソフト社長ビル・ゲイツ(当時)から薫陶を受ける。99年アイドック株式会社を創業、05年PDFコンテンツの著作権保護ソリューション「KeyringPDF」を開始。07年、国内初のSaaS型FLASHコンテンツ保護ソリューション「KeyringFLASH」を開始した。デジタル著作権保護の第一人者。趣味はフライフィッシング、東京外国語大学卒、東京都出身。
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